製薬会社の命ともいえる製品の安全管理にドキュトーンを活用
情報の正確性を担保しながら作業工数を1/5に
製薬の街・富山で創業し、以来114年の間人々の生活に寄り添った医薬品を開発・提供してきた株式会社池田模範堂。同社は、kintoneで一元管理した自社製品に関する副作用情報を、複数の既定フォーマットに出力するためにドキュトーンを活用している。製薬会社の命ともいえる製品の安全管理において現場主導のDXを推進し、業務の効率化と情報の正確性を担保した同社の取り組みを、信頼性保証部 信頼性推進グループの辻 大輔氏と山野井 遊氏に伺った。
- 【課題】効率的な薬事安全管理に求められるデータ集約・管理
- 【選定】安心・安全な製品を届けるための徹底した品質保証を支える業務にドキュトーンを導入
- 【運用・効果】データ登録業務の工数が約1/5に。他社との情報連携に重要な「正確性」も担保
- 【今後】ドキュトーンにさらなる機能拡大を期待、今後は別業務への利用拡大も検討。
【課題】効率的な薬事安全管理に求められるデータ集約・管理
明治42年の創業以来、長きにわたり「薬」に携わってきた池田模範堂。現在はOTC医薬品※1に特化した製薬会社として、日本人なら誰もが知る「ムヒS」をはじめとした製品を提供している。同社は今、「肌を治すチカラ」をスローガンに掲げ、創業来取り組んできた虫刺され・かゆみ止め分野から肌トラブル全般を見据えた「肌分野」へとその領域への拡大を図り、日夜研鑽を積んでいる。
また、研究所のデザインはスキップフロア構造を取り入れることで発想豊かな環境を実現。さらに小学校での出張授業や工場見学の促進、製品の寄贈など教育を軸とした社会貢献事業にも力を入れている。
同社は3年前に、自社が送りだすすべての製品の品質保証を統括する部署を「信頼性保証部」として独立化。内部を3つのグループで構成し、そのうちの一つである「信頼性推進グループ」では、製品の安全管理保証に関わる業務を行う「薬事・安全管理」と製薬会社として守るべき法令順守を管理する「コーポレートQA」の二つの業務に従事している。同グループに所属する辻氏と山野井氏は次のように話す。
「薬事安全管理業務のひとつに、広告薬事といわれるものがあります。医薬製品にはキャッチコピーひとつとっても多くの制約があります。適切な言葉で製品の良さや効能をしっかり伝えているかを確認しています。そのほかにも、製品そのものの安全管理があります。私は両方に関わっています(辻氏)」
「私は薬事安全管理の業務の中でも申請業務をメインとしています。国内外の新製品に関する申請などを手掛けています。具体的には、厚生労働省に対して開発する製品の詳細、開発段階の情報などを含めて申請するのですが、不足情報などについてのやり取りなども含めるとだいたい申請から承認までは1年くらいを要しますね。もっとも、その前段階の申請準備が長く、製品の開発と並行して動くような時間軸です(山野井氏)」
さらに安全管理業務の業務内容と役割について、と辻氏は話す。「医薬品の製造販売業の許可要件として、GQP(Good Quality Practice)※2とGVP(Good Vigilance Practice)※3の二つに則って管理することが義務づけられています。そのため安全管理業務では、GVPに則り行政や医薬学会で新しい副作用が報告されていないか、自社の製品が起因する副作用が報告されていないかを常に確認しています。さらに、お客様からの相談などの情報も集約して、副作用の発生率や新たな症状が出ていないなどを把握しなければなりません。しかし、従来のやり方はすべて紙で管理していたため、データとして集約・分析することが困難でした」
※1:薬局・薬店・ドラッグストアなどで処方箋なしに購入できる医薬品
※2:医薬品等の品質管理方法に関する基準
※3:医薬品等の製造販売後における安全管理に関する基準
【選定】安心・安全な製品を届けるための徹底した品質管理を支える業務にドキュトーンを導入
そこで辻氏は、まず情報をデータとして集約することを検討したという。「この業務はもともと研究所で行っていたのですが、信頼性保証部に移管するという話が持ち上がったんです。であれば、このタイミングで業務改善したいと思い、2022年の春ごろから情報収集を始めました。いろいろと調べた結果、サイボウズ社の『kintone』の導入を決定。社内導入手続きなどを経て2023年の2月に導入が完了しました」
kintoneの導入で情報の集約化は実現したが、同社はもう一つ課題を持っていた。それは複数種類存在する既定の帳票へのデータ出力だった。その業務を担当する山野井氏は次のように話す。「例えばお客様窓口に『この製品を使ったらこんな症状が出た』とお申し出やお問い合わせがあった場合、最初に対応した担当者が作成する電話応答の記録用紙、副作用の内容を具体的に書き出した用紙、さらにその副作用をもっと細かく分析するための用紙、他社に製造依頼している製品であればその企業へ共有するための用紙...と工程に必要な書類が複数種類存在します。1つの案件が発生すると少なくとも3枚は紙が発生する流れになっています。そして、最終的に安全管理責任者が押印したものを保管するため、現状では紙への出力が必要な状態なんです」。
「kintoneのプラグイン対応製品を調べていて、『ドキュトーン』の存在を知りました。実は当社の扱っているフォーマット類がすべてWordであるため、対応できる製品が限られていました。Wordにデータをそのまま出力できることが決め手となり、ドキュトーンの導入を決定しました」と辻氏は話す。
【運用・効果】データ登録業務の工数が約1/5に。他社との情報連携に重要な「正確性」も担保
「ドキュトーンの導入により大幅な工数削減につながりました」と山野井氏は話す。「基本的にはどれも同じ情報を活用している報告書なので、一度情報を入力すれば済むんです。以前は単純に入力する事務作業だけで20~30分かかっていましたが、今は5分~10分になりました。1/5程度まで工数削減できたことになります」
また、情報の正確性が担保されたことも大きいという。「先ほども申し上げた通り、製造依頼をしている企業への情報共有などでは間違いがあってはいけないのですが、複数のフォーマットにコピペ対応していた頃はどうしてもミスが発生していました。今では最初に入力する際にきちんと確認していれば、誤った情報が出力されることはありません」(山野井氏)
さらにもう一点、「Wordで出力されるため、ちょっとした修正などが簡単にできる」ことを挙げている。「小さなことかもしれませんが、意外に手間がかかるんです。こういう点も含めて使い勝手が良いと思います」(山野井氏)
オプロについては、導入時はもとより導入後のサポート体制を高く評価いただいた。「テキストではわかりにくいことも、オンラインですぐにご説明いただける。また、弊社の細かい要望や問い合わせに対しても、すぐに返事をいただけてとても助かっています」と辻氏は話す。
【今後】ドキュトーンにさらなる機能拡大を期待、今後は別業務への利用拡大も検討。
辻氏は、「他にも帳票類はたくさんあるので、今後利用範囲を広げていければと考えています」と話す。一方で山野井氏は、「ドキュトーン側にもWord帳票出力時の関数計算機能ができればいいなと思っています。現在はkintone側で設定しておく必要がありますが、ドキュトーン側に機能追加されるとより利便性が向上するなと。ぜひご検討いただきたいです」と期待を寄せていただいた。
<広大な土地に整然と並ぶ池田模範堂本社と工場棟>
<工場棟までの通路は常にお掃除ロボットが稼働し清潔に保たれている>
<研究棟のロビーには山野井氏による研究発表が掲示されている>
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